ある年のクリスマスイブの夜、私はとてつもない寒さを感じた。

ある年のクリスマスイブの夜、私はとてつもない寒さを感じた。_title クリスマスイブ

毎年クリスマスシーズンになると思い出す。
忘れもしないあの忌々しい2016年のクリスマスイブだ。

当時ディレクターとして勤めていた私は
広告業界の宿命で平日は電車で帰る事は出来ず深夜まで働き
ホテルか会社に寝泊まりする激務をこなしていた。

例年だとクリスマスイブは年末の繁忙期で、スタッフが皆ゾンビのように稼働中の職場で過ごすことが多いのだが、

2016年のクリスマスイブは珍しく、既に年内の大体の仕事が完了していて、なおかつ土曜日だった。

メリー・クリスマス,ツリー,屋内

クリスマスイブに予定が空いているなんて何年ぶりだろうか。

しかし連日の激務の疲れもあり、
クリスマスイブ当日に目が覚めたのは夕方頃だった。

寝ぼけ眼でタバコを吸っていると、ある事を思いだした。

職場で働いているデザイナーが
同じ映画を6回だか7回だか観に行ったと言うのだ。

男性,タバコ,煙草,吸っている,煙,ケムリ


その映画の題名は「君の名は。」

当時、社会現象になっていた作品だ。

社会人になってからというもの仕事が忙しくて、
休みの日は、ほとんど寝て過ごしていたので
映画なんて観た記憶が無い。

しかしディレクターという立場上、
ある程度は世の中の流れを把握しておきたいのもあるし、
同じ映画を何回も観るなんて、よっぽどの作品なんだろうと思い、
突然だったが私は「君の名は。」を観に行く事に決めたのであった。

残念な事にクリスマスイブだというのに
当時彼女がいなかった私
は1人で映画館に観に行く選択肢しか無かった。

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でも大丈夫、私は1人でも泣かない。
自慢じゃないが、私は小学生からこの日まで
一度も泣いた事は無かった。

男は涙を見せてはいけないと
心に強く誓ったあの日から自分への約束を守っている。

少し前に漫画「赤ちゃんと僕」最終巻を読んで、
嗚咽が出た気がするがアレはノーカンだろう。

「君の名は。」は
地元の「アリオ西新井」の映画館で観る事にした。

支度を済ませ家を出た私は、西新井駅を降りた目の前にあるパチンコ店には入らず、久しぶりのアリオ西新井を迷いながら進み、ようやく映画館に到着した。

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ある程度予想はしていたが、話題の注目作品とあって夜遅い時間なのにも関わらず、かなりの混雑具合だった。

周りは家族連れが少数と、クリスマスイブに浮かれているカップルばかり…。

「あの人イブに1人で可哀想」的な視線を感じた私は
カップルに精一杯の威嚇をかましながらスクリーン前の左右中央、やや前列に腰を据えた。

隣は1席空けて両側ともカップルだ。
1人に対して、こんなマークをされるのは世界でもメッシと私くらいだろう。

どんなフォーメーションなんだ。

幸いな事に既に室内が暗かったので、精神的ダメージは最小限に抑えられた。

上映が始まってからというもの、
映画自体は本当に良く出来ていたので楽しめた。

終盤は年甲斐もなく少し胸がキュンキュンしていた。

しかし気を付けなくてはいけない。
この日はクリスマスイブで周りはカップルだらけだ。

そんなこんなで上映が終わり、
室内が一気に明るくなった時に私は気付いた。

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「…寂しい。」

周りのカップルが
余韻に浸りながら幸せそうに席を立っていく中、
私は下を向きながら小走りで喫煙所へ駆け込んだ。

タバコを吸いながら当時30過ぎのおっさんは思った。

「田舎の美少女と入れ替わりたい!」。

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タバコを吸い終わり、
アリオ西新井を出た瞬間だった。



私は人生で経験した事が無い、
とてつもない寒さを感じて
マフラーをしっかりと巻き直し、

西野カナも引く位、震えながら帰路についた。

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