O谷先輩のハズレ馬券

O谷先輩のハズレ馬券_title スラム街足立区

それは20年前ほど前の
私が16歳の時の話である。

当時私は東京のスラム街、足立区という
暴力が全てを支配している土地で暮らしていた。

東京のスラム街、足立区の風景イメージ

足立区の男が16歳の誕生日に
原付の免許を取りに行くのは

アフリカの部族が成人の儀式のバンジージャンプで
自らの漢気を誇示するのと同義である。

アフリカの部族の成人の儀式のイメージ

16歳になった私も例に漏れず
誕生日に原付の免許を取り

比較的時給が良い
寿司屋のデリバリーのアルバイトを始めた。

アルバイト先の寿司屋には足立区では希少な
後輩に優しい3つほど年上のO谷先輩という人がいて
私はよく可愛がってもらっていた。

O谷先輩はバイトが終わった後の深夜

私をたまに街の外れにある
オシャンティなゲーセンに車で連れて行ってくれた。

夜のドライブの車内イメージ,夜景

ちなみに当時の足立区の16歳からみて
車を保持している事は大変なステータスであり

世界の軍事情勢で例えると一国の軍隊が
空母を保持しているのと同等の意味があった。

空母のイメージ

保持している事自体で
他国(主に埼玉県)への牽制にもなるであろう。

普段原付にしか乗っていない16歳は
深夜に車(もはや空母)で

ブラックライトが煌めくゲーセンに
遊びに行くなんて経験は浮世離れしていて

3つほど年上のO谷先輩が凄く大人に見えた。

そんなある日

バイトの休憩室で談笑していると
ふとO谷先輩が私に言った。

O谷先輩「おい。良いものやるよ」

私が期待しつつ手に取ったものは
見慣れない紙切れだった。

O谷先輩の馬券イメージ

私「…なんすかコレ…?」

O谷先輩「見た事ないの?…馬券だよ」

それは生まれて初めてみる馬券だった。

O谷先輩「ハズレてるけどなwww」

きっとO谷先輩は
アタリと思ってハズレと分かった時の
私のリアクションを期待していたのであろう。

しかし私は

たとえハズレだったとしても
16歳では簡単に入手出来ない馬券を
なんだか大人限定のアイテムのように感じて

先輩にお礼を言って財布の奥にしまい、
その日は解散した。

数日後、
昼間にアルバイト先の店舗から外に出ると

隣にある公園の側道で

友達のA木君が乗っている原付を
O谷先輩の車が猛バックで追いかけていたのを見た。

本当にもう少しで轢きそうな勢いだった。

知らないフリをして黙っていたのはもう時効だろう。

あの時やさしいO谷先輩を激昂させた
A木君は一体何をしたんだろう…

そんな事件もありつつ
寿司屋のデリバリーのバイトにも慣れてきたある日

私はいつものようにバイクで寿司の配達を済ませ
店舗に戻ろうとしていた。

デリバリー,バイクの運転イメージ

しかし

ん?

んん!?

めっちゃ腹が痛くなってきた…

これはおそらく
ウンコをすれば回復する類いの痛みだ。

バイト先の店舗のトイレは
男女兼用で心理的に使いづらい。

しかし当時から週5で腹痛の私にぬかりはなかった。

周辺の公衆トイレの位置は完璧に把握している。

私は落ち着いてウンコにコミット出来るように
人通りが少ない公園のトイレをチョイスして

用を足した…。

公衆の和式便所,トイレ イメージ

その時である

ケツを拭こうとトイレットペーパーを
巻いた時に気付いた。

紙が…   少ししか……

無い……?

トイレットペーパーが少ししか無い顔のイメージ

前回使用者の慈悲であろうか…

手にとったその筒には
薄い紙が一巻き分だけ残されていた。

状況はかなり深刻だ。

この公衆トイレには大が出来る個室は一部屋だけで
隣の部屋から紙を持ってくる事は不可能だ。

ケツに付いているウンコの粘度から想定するに
とても薄い紙一枚ではぬぐいきれない事は明白であった。

私は普段使わない脳味噌をフル回転させ
この危機的状況を回避する手段を模索した。

配達のお釣り用の1000円札で
ケツを拭くのは
コストが高すぎて駄目だ。
夏目漱石にも失礼だろう。

最終手段はパンツで拭いてノーパンで帰る事だろう。

しかしそれは本当に本当の最終手段だ。

スラム街足立区で育った16歳の
崇高なプライドがそれを邪魔した。

ノーパンで帰るのは絶対に嫌な顔のイメージ


そもそも…この筒でも拭けるんじゃないか?

しかし…
それでも経験上あと少し紙が足りない。

困り果てた私は何か使える物がないか
持ち物をチェックし始めた。


そして…

見つけたのである…

自由へのパスポート…

自由へのパスポートのイメージ

O谷先輩のハズレ馬券を!!!

大人限定のアイテムのように感じて
大事に財布の奥にしまっていたハズレ馬券は

たった今、緊急用の
トイレットペーパーとなったのであった…。

お手洗い,用を足した後のイメージ

ちなみに馬券はかなり固かったので

ケツを出したまんま一生懸命揉んで
柔らかくしてから使用した。

同じ境遇になった方は是非参考にしてほしい。

それからO谷先輩とは
私がバイトを辞めて連絡をとらなくなってしまったが
この場を借りて感謝の意を表したい。

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