これは私が慕ってやまない
N村兄貴から聞いた話である。
N村兄貴と知り合ったのは10年ほど前だ。
当時大きな会社に出向していた私は
右も左も分からないような若造だった。
同じ職場で働いていた年上のN村兄貴は
所属は別会社にも関わらず色々と助けてくれた。
兄貴は整った顔でシュッとしており
どこかしら少しエキゾチックで
ダンディな風貌をしている。
そんな頼りがいがある兄貴を
私は慕ってやまない。
ある時N村兄貴が珍しく
普段語らない昔の話をしてくれた時があった。
話を聞くと…
N村兄貴には地元に弟分が何人かいるようで
その弟分達も私と同じように兄貴を慕っていた。
納得である。
ある日の昼過ぎ、N村兄貴と弟分の1人は
2人で雰囲気の良い喫茶店に入ったそうだ。
席に腰掛けた
N村兄貴はエスプレッソを、
弟分は普通のホットコーヒーを注文した。
数分後…
店主が注文された物を丁寧に持ってきた。
N村兄貴のエスプレッソ
弟分の怒号が店内に響き渡った。
「おいっ!兄貴のコーヒーが少ないじゃねーかっ!!怒」
…当たり前である。
通常エスプレッソは
3、4口分ばかりの小量で提供される飲み物だからだ。
兄貴は恥ずかしさのあまり
ずっと下を向いていたそうだ。
しかし兄貴のメンツを潰された(と思っている)
弟分の怒号は止まらない。
「今すぐ作り直せ!」
今にも暴れだしそうな弟分の
気迫に押された店主はしぶしぶ了解したそうだ。
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